「受託開発」という言葉を聞いたことはあるけれど、実際にどんな仕事なのか、どうやって始めればいいのか分からない──
そんな方も多いのではないでしょうか。
特に未経験の方にとっては、「自分にできるのか？」「案件なんて本当に見つかるのか？」という不安がつきまとうかもしれません。
しかし、現在はエンジニア不足が続く中、受託開発のニーズは高まっており、未経験からチャレンジできるチャンスも広がっています。
スキルや実績を少しずつ積み上げながら、自分のペースでキャリアを築いていけるのも、受託開発ならではの魅力です。
この記事では、「受託開発とは何か？」という基本から、初心者でも受けられる案件の種類、案件の探し方、始めるために必要な準備まで、分かりやすく解説します。これから副業や独立を目指す方に向けた実践的なガイドとして、ぜひ参考にしてください。
受託開発とは？基本の理解からスタート
受託開発の定義と特徴
受託開発とは、クライアント（発注者）から依頼を受けてシステムやアプリなどを開発・納品する業務形態です。
あらかじめ契約した範囲内で、納期・成果物・金額が明確に決まっており、「業務委託契約」に基づいて仕事を進めます。
最大の特徴は、プロジェクト単位で責任を持つこと。
チームや個人で受けた仕事を、一定の品質と期限内で完成させる必要があります。
その分、自分の裁量で進められる自由度もあり、やりがいを感じやすい働き方です。
SES・派遣・請負との違いは？
IT業界には似たような言葉が多く混乱しがちですが、受託開発は他の契約形態とは明確な違いがあります。
- SES（システムエンジニアリングサービス）：エンジニアが常駐して技術提供を行う。成果物ではなく「労働力」に対して契約。
- 派遣：派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で指揮命令を受ける。労働法の対象。
- 請負（受託開発）：あらかじめ決まった成果物を納品する契約。成果物責任がある。
このように、受託開発は「成果で報酬を得る」スタイルであり、他の形態よりも自律性と責任が強いのがポイントです。
受託開発が求められる背景と市場動向
昨今、企業のDX（デジタルトランスフォーメーション）推進により、社内システムの内製化やクラウド化が急速に進んでいます。
こうした変化に対応するため、多くの企業が外部パートナーにシステム開発を依頼しており、受託開発のニーズは年々高まっています。
特に中小企業やスタートアップでは、フリーランスや小規模チームに受託するケースも増加傾向にあります。
未経験者でも学習と実績次第で参入しやすく、スモールスタートが可能な点も、注目される理由のひとつです。
受託開発の案件にはどんな種類がある？
受託開発と一口に言っても、その内容は実に多様です。
ITスキルや得意分野に応じて選べる案件が豊富にあり、自分に合った領域から始めやすいのが特徴です。
ここでは、代表的な案件ジャンルを紹介します。
Webシステム・業務アプリケーション開発
企業の業務効率化やデータ管理のためのWebシステムや業務用アプリの開発は、受託案件の中でも特にニーズが高い分野です。
例えば、勤怠管理システム、顧客管理（CRM）、予約システムなどが該当します。
PHP、Java、Ruby、Pythonなどのバックエンド言語を使った開発が中心となるため、ある程度のスキルが必要ですが、フレームワークを使ったシンプルな構築案件も存在するため、学習初期でも挑戦できる可能性があります。
スマホアプリ・ゲーム開発
スマートフォンアプリやカジュアルゲームの開発も、受託領域として人気があります。特にUnityやFlutterなどのマルチプラットフォーム対応の技術が使えると、依頼されやすくなります。
最近では、中小企業や個人事業主がPR用アプリを外注するケースも増えており、未経験から小さな案件に関わるチャンスもあります。
ホームページ制作・ECサイト構築
Web制作系の案件は、比較的参入しやすい分野です。WordPressを用いたコーポレートサイト制作や、Shopify・STORESなどを使ったECサイト構築などが含まれます。
デザインからコーディングまで一貫して対応できると単価も上がりますが、テンプレートカスタマイズだけでも受注可能な案件もあり、学びながら実績を積みやすいジャンルです。
デザイン・動画編集・ライティング系案件も
開発だけでなく、ノンエンジニア向けの受託案件も多く存在します。たとえば：
- バナー・LP・アイコンなどのデザイン制作
- SNSやYouTube用の動画編集・サムネイル制作
- 企業ブログやメディアの記事ライティング
こうした業務は、成果物の納品で完結する＝受託開発と同じ構造であり、ITスキルが浅くても始められる点が魅力です。
未経験者が受託開発を始めるために必要な準備
「受託開発に興味はあるけれど、経験もスキルもまだ不十分……」という方でも、しっかりと準備を重ねれば、未経験からでも案件を受けることは可能です。
ここでは、まず取り組むべき準備や心構えを解説します。
最低限身につけたいスキルセット
受託開発を始めるには、案件の種類に応じて一定の基礎スキルが求められます。たとえば：
- Web制作なら：HTML/CSS、JavaScript、WordPressの基本操作
- 業務システムなら：PHP、Java、Pythonなどの基本的な文法や構造の理解
- アプリ開発なら：FlutterやUnity、Swift、Kotlinの環境構築と基本操作
最初からすべてを完璧にする必要はありませんが、自分が目指す領域に必要な最低限の知識は身につけておきましょう。
スキル証明や実績の作り方（ポートフォリオなど）
未経験者が信頼を得るうえで重要なのが、自分のスキルや成果物を証明できるポートフォリオです。
実際の案件に近い形で以下のような成果物を用意しておくと効果的です。
- 自作したWebサイトやアプリのデモリンク・GitHubリポジトリ
- コーディングだけでなく、設計書や仕様書を含めると信頼度アップ
- チュートリアルベースでもOK。何を学び、どう実装したかを伝えることが大切です
ポートフォリオは、単なる作品集ではなく、「仕事を任せられるかどうか」を判断される場だと意識しましょう。
学習と実践のバランスの取り方
受託開発を目指す人にありがちなのが、「スキルが完璧になるまで仕事を受けない」状態に陥ることです。
しかし、実際には学習と実践を同時に進めることが重要です。
- 初歩的な案件（修正・テスト・サポート業務など）から小さく受けてみる
- 学んだことをアウトプットするつもりで、課題解決型の実績を積む
- 案件を受けることで、リアルな課題に触れ、学習だけでは得られない成長が得られる
最初の一歩は不安でも、「できる範囲でやってみる」という姿勢が、着実な前進につながります。
受託開発案件を見つける方法と選び方
準備が整ったら、次は実際に案件を探すフェーズに進みましょう。
現在では、受託開発案件を見つけるための手段は多様化しており、未経験者でもチャレンジしやすい環境が整っています。
ここでは、代表的な探し方と、案件選びのポイントを紹介します。
クラウドソーシング（Lancers・クラウドワークスなど）
最も手軽に始めやすいのが、クラウドソーシングサービスの利用です。
主なサービスには以下のようなものがあります：
これらのサイトでは、Web制作やシステム開発、ライティング、動画編集など多様な案件が日々掲載されています。未経験OKと書かれている案件もあるため、「初心者向け」「簡単」「サポートあり」などのキーワードで検索するとよいでしょう。
ただし、報酬が安価な案件も多いため、相場感をつかみながら見極める力が必要です。
エージェントサービスやマッチングサイトの活用
ある程度スキルが身についたら、受託開発向けのマッチングサービスやエージェントを活用するのもおすすめです。
以下はその一例です：
- ITプロパートナーズ：週2〜3稼働の案件も豊富
- Workship：スタートアップ系の案件が多い
- レバテックフリーランス：経験者向けの高単価案件が中心
これらは、希望条件やスキルに応じて案件を紹介してくれるため、クラウドソーシングよりも効率的にマッチする可能性があります。特に、継続案件を探している方に適しています。
知人・元同僚経由での受注や紹介案件
意外と見落とされがちなのが、人づてでの案件獲得です。過去に一緒に働いた人や、SNSでつながっているエンジニア仲間から、「誰か手伝ってくれる人いない？」と声がかかるケースは珍しくありません。
- SNSでポートフォリオや学習記録を発信する
- ブログやYouTubeでスキルを公開する
- オンライン・オフライン問わず、勉強会・コミュニティに参加する
これらの行動は、“自分を見つけてもらう”ための受託営業とも言えます。実績が少ないうちは、信頼される人間関係からの依頼が最も入りやすいルートになります。
トラブルを防ぐ！初心者が注意すべきポイント
受託開発では「納品物に責任を持つ」働き方になるため、契約や納期、コミュニケーションのトラブルが発生しやすいという面もあります。
特に未経験者のうちは、見落としがちなポイントも多いため、あらかじめ注意点を把握しておくことが重要です。
契約書・NDAなど法的な確認事項
受託案件では、書面での契約を必ず交わすことが基本です。
たとえ小規模な案件であっても、後のトラブルを防ぐために以下を明確にしておく必要があります。
- 納品物の範囲（スコープ）
- 納期と支払い条件
- 著作権の帰属
- 秘密保持契約（NDA）の有無
口約束だけで進めるのは避け、不明点は事前にしっかり確認する習慣をつけましょう。
契約書のテンプレートを自分で用意しておくのもおすすめです。
スケジュール管理と納期意識
「納期を守ること」は受託開発者にとっての信用そのものです。未経験のうちは、見積もりやスケジュール感に慣れていないことが多く、納期に遅れてしまうリスクがあります。
- タスクを細かく分けて進捗を可視化する
- 余裕を持った納期設定を心がける
- 進捗に遅れが出そうなときは、早めに相談・報告する
このように、「報連相」ができるだけでも信頼されやすく、次の案件にもつながりやすくなります。
報酬と工数のバランス感覚を養う
初心者のうちは、「とにかく案件を取りたい」と思うあまり、報酬に見合わない作業量を引き受けてしまうケースが少なくありません。
- 作業時間の見積もりと実績を記録しておく
- 「単価〇円×時間」だけでなく、“成果物の価値”から逆算する視点を持つ
- 条件に納得できない場合は、無理に受けず交渉も視野に
受託開発では、安く引き受けすぎると疲弊して続かなくなる可能性があります。適切な単価で無理なく継続できるよう、少しずつ判断力を養っていきましょう。
まとめ：未経験からでも受託開発は目指せる
受託開発は、未経験者にとっても挑戦可能な働き方です。
スキルを磨き、ポートフォリオを整え、適切な案件を見つけて着実に実績を積んでいくことで、自分の裁量で働くキャリアを築いていくことができます。
最初は不安もあるかもしれませんが、「小さく始めて、コツコツ続ける」ことが最大の近道です。
現在はクラウドソーシングやマッチングサービス、SNSなど、案件を獲得するための手段も豊富にあります。
大切なのは、「やってみたい」という気持ちを行動に変えること。
受託開発という働き方は、あなたのその一歩をしっかりと受け止めてくれるフィールドです。
ぜひ、本記事を参考に、自分らしい働き方への第一歩を踏み出してみてください。
